個人の訪問美容師は儲かる?はじめる前に知っておきたい年収と稼ぐコツ

高齢化が進み、3人に1人が高齢者になる時代。思うように体を動かせなくなって、自宅を出ることが難しくなる人も増えて、訪問美容師のニーズが高まると言われています。すでに訪問美容師として成功している人もいて、少し興味があるという人もいるかと思います。

ただ実際に独立して個人ではじめるとなると、本当に儲かるのか、食べていけるのかという点が気になりますよね。そこでここでは、個人で訪問美容師になるときの年収例や高い年収を得るための方法についてご紹介していきます。

訪問美容師の仕事内容と年収

サロンに勤めている美容師の平均年収は300万円前後。若手はこれよりも安くて、250万円に満たないという人もいますよね。

朝から夜中まで働き、雑用などもこなして毎日ヘトヘト。それなのに給料は同世代の会社員よりも少ない。

将来しっかり稼げるならいいのですが、美容室に残っても年収は低いままで、独立して儲かる人はひと握りだけ。将来が不安という人も少なくないはず。そんな人に検討してもらいたいのが訪問美容師という選択肢です。

訪問美容師になって低収入から抜け出して、生活にゆとりを持てるようになったという人も大勢います。そこで、まずは訪問美容師の働き方や年収などについてご紹介していきます。

訪問美容師の仕事内容

訪問美容師の仕事場はサロンではなく、依頼者の自宅や介護施設です。高齢などの理由でサロンに行けないという人から依頼を受け、依頼者の自宅などでカットやパーマ、カラーなどを行います。

法律に詳しい人なら「訪問してのカットやパーマは禁止されているのでは?」と思うかもしれませんが、下記のいずれかに該当する場合には、訪問美容が認められています。

訪問美容OK

  • 疾病などにより、サロンに行けない人への施術
  • 婚礼などの儀式に参列する人に対する儀式直前の施術
  • 養護老人ホーム、児童養護施設などの施設における施術
  • 港湾に停泊中の船舶における、乗組員への施術
  • 興行場などにおいて、演芸する人に対する出演直前の施術

基本的な考え方としては、美容師は衛生的な環境で施術する必要があり、上記のように例外がある場合のみ訪問美容が許されています。高齢で家や介護施設を出られない人は、1もしくは3に該当するため、訪問での施術が認められています。

訪問美容師の年収

これから訪問美容師になろうとしている人にとって気になるのは、訪問美容師の年収ですよね。サロンに勤めるよりも稼げるのか、それとも収入が減ってしまうのか事前に知っておきたいところですが、年収がどれくらいになるかは働き方によって違います。

個人で訪問美容師になる場合には、仕事をどんどん受ければ収入アップになりますが、サボり癖のある人は全然稼げなくなります。

たとえばカット&パーマを6,000円で引き受けたとしましょう。1日2件なら1日の売り上げは12,000円です。これを200日働くと売り上げは240万円です。

240万円ならなんとか生活はできそうと思うかもしれませんが、240万円は売り上げで、ここから経費を差し引くことになります。移動車の維持費やガソリン代がかかり、理容に必要な器具も揃えなくてはいけませんし、メンテナンスも必要です。

ところがカラーもできて1件平均8,000円になり、なおかつ1日3件の予約があり、300日働いたとします。売り上げは720万円にもなります。経費が2割だったとしても年収は576万円になり、サロンで働くよりも倍近く儲かります。

個人でも訪問美容師としてしっかり年収アップさせる方法

働き方によって年収に大きな差が出るとお伝えしましたが、だとしたらどのように働けば儲かるのか知りたいですよね。そこでここでは、個人の訪問美容師として、サロン時代よりも年収アップさせる方法をご紹介します。

必要なこと

  • できるだけ休まずに働き続ける
  • リピーターを確保する
  • 介護施設と提携する
  • 経費をできるだけ抑える
  • 訪問美容師以外の副業をする

これがサロン時代よりも年収が増やすための方法です。それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

できるだけ休まずに働き続ける

訪問美容の料金は自分で決められるため、高く設定すれば儲かると思っている人もいるかもしれません。ところが料金は地域ごとに相場があり、あまりにも相場よりもかけ離れていると、誰も利用してくれません。

しかも利用者の多くが年金生活ですので、高額な料金を払えません。そうなると1件あたりの売り上げはサロンよりもやや高くなる程度で、しっかり稼ぐには件数を増やすしかありません。このため、訪問美容師として稼ぐコツは休まないことです。

仕事量が増えるため、人によってはサロン勤めしていたときよりも、体力的に大変になったと感じるかもしれません。それでも月給制と比べて、やればやるだけ年収が増えるので、働くことが好きな人なら大幅な年収アップを期待できます。

リピーターを確保する

個人として訪問美容師で稼ぐには、いかにして宣伝していくかが重要になります。HPを作ったりInstagramなどのSNSをはじめたりして、様々な方法で集客し、そして利用者をリピーターにしていく必要があります。

リピーターになってもらうには、価格以上のサービスを提供しなくてはいけません。そのためには腕がいいのはもちろんのこと、コミュニケーション能力も求められます。利用者に楽しい時間を過ごせたと感じてもらうことでリピーターも増え、年収が安定していきます。

反対にリピーターを確保できないと、いつまで経っても営業活動に力を入れなくてはいけなくなり、売り上げを伸ばせない状態が続きます。

介護施設と提携する

リピーターと同じくらい大切なのが、介護施設との提携です。介護施設と提携できれば、毎月安定した収入が見込めるようになります。個人利用とは違って10〜20人分をまとめて施術することになりますので、1日でまとまった金額を稼げます。

ただし、いきなり「提携してください」と言っても、すでに提携している他の訪問美容師がいると後から入るのは難しく、単発での依頼はあってもなかなか提携に結びつかないといったデメリットもあります。

このためオープンしたばかりの施設に営業したり、人のつながりを作って紹介してもらったりといった営業展開が必要になります。

地道な営業活動を続けて、1年かけて提携してもらえるというようになったという人もいますので、粘り強く営業し続けましょう。

経費をできるだけ抑える

年収は売り上げから経費を差し引いたものですので、経費を抑えることはとても重要です。訪問用の車をこれから購入するなら、維持費が安い軽自動車を選ぶのがベスト。大きな車は安定して稼げるようになるまで待ちましょう。

他にも経費をとにかく減らす意識が重要です。ただし利用者の快適さに影響を与えるシャンプーやトリートメント、ハサミ、ブラシなどは、できるだけいいものを選ぶこと。経費は抑えるべきですが、理容用品に対する出費は削らずに、値段以上のサービスを提供しましょう。

訪問美容師以外の副業をする

最初から訪問美容師だけに絞って開業すると、収入が安定するまでの期間が想定よりも長くなったときに、生活が苦しくなります。

その結果、廃業してサロン勤めに戻ってしまうことがよくあります。そうならないように、訪問美容師以外にも副業をはじめましょう。

最近はギグワークと呼ばれる単発の仕事が増えており、それらを上手く活用できれば、訪問美容の予約が入っていなくても、生活に困ることなく収入が安定するまでの期間を乗り切れます。少なくともリピーターが増えるまでは、生活を維持するために最低限の副業を行っておきましょう。

ちなみに開業してすぐに仕事の依頼があるわけではなく、最初の数カ月は1ヶ月に数件しか依頼がないという状態が続くこともあります。訪問美容以外の稼ぐ方法を確保するだけでなく、サロンで働きながら、1年分の生活費くらいは貯めておきましょう。

個人で訪問美容師を始める3つのメリット

ここまでの説明で、訪問美容師として稼ぐのは難しそうと感じたかもしれませんが、それでも独立して開業する人がいるのは、もちろんメリットがあるからです。

メリット

  • 独立して店舗を開くよりもリスクが少ない
  • 自分で仕事の量を調整できる
  • 職場の人間関係によるストレスがなくなる

これらが訪問美容師として働く3つのメリットです。それぞれのメリットの詳細を確認していきましょう。

独立して店舗を開くよりもリスクが少ない

美容師が独立してお店を持つときの費用は1000万〜2000万円 かかり、さらには家賃や光熱費などが発生するため、一定数のお客さんを確保し続けないと赤字になって簡単に破綻します。ところが、訪問美容師は初期費用も維持費も少なく、貯金があれば借金ゼロでのスタートも可能です。

しかも訪問美容師は予約が入っていない時間以外を自由に使えるため、稼げないときには副業して生活費を稼げます。ところがお店を持つと、営業時間内はお店で待機しなくてはいけませんので、副業をするにしても選択肢が限られてしまいます。

このように個人の訪問美容師はリスクが低く、低予算で独立できるといったメリットがあります。初期費用の調達で頭を悩ませることもなく、気軽に始められるのが訪問美容師の魅力です。

自分で仕事の量を調整できる

訪問美容師は働けば働くほど儲かるとお伝えしましたが、反対に自由に仕事の量を調整することも可能です。極端な例ですが、2ヶ月働き続けて1ヶ月休んで海外を旅するといったこともでき、自分の予定を好きなように立てられます。

どうしても行きたいコンサートがあるなら、その日は予約を受け付けないようにすればいいだけ。サロン時代からは考えられないくらいの自由度があります。もちろん収入が減りますので、仕事と休みのバランスをとらなくてはいけませんが、好きに休めるのは大きなメリットです。

とはいえ、実際に働き出すと年収が減るのがこわくて、予約をどんどん入れていくことになります。そうなると疲労で倒れてしまうこともありますので、むしろ意識して働かない日を入れて頭と体を休めるように心掛けてください。

職場の人間関係によるストレスがなくなる

サロンに勤めていると、どうしても性格が合わない先輩などもいて、職場の人間関係でストレスを感じることになりますが、独立して個人で訪問美容師をはじめれば、少なくとも職場に自分の嫌いな人はいなくなり、人間関係のストレスで悩む必要がなくなります。

もちろん依頼者や施設の担当者と良好な関係を築くための気遣いは必要ですが、先輩や上司から必要のないプレッシャーをかけられることもないので、施術するときにも気持ちに余裕ができ、いつも笑顔で対応できるようになります。

自由な時間が増えてストレスがない。この2つだけでも、訪問美容師を開業するのに十分な理由になるかもしれません。職場での人間関係でストレスを感じているなら、訪問美容師は十分に検討する価値があります。

まとめ

個人で訪問美容師をはじめて年収が上がるかどうかは、どのようなスタイルで働くかにもよります。とにかく休むことなく働き続けられるなら稼げますが、あまり仕事が好きではなくサボりがちという人は年収が減ります。楽して儲かる働き方ではないことを、しっかりと頭に入れておきましょう。

それでもサロンで働くよりも自由な時間が増えて、職場の人間関係で悩まされることもなくなります。独立してお店を持つよりもリスクも少ないといったメリットもあり、しかもこれからの高齢化社会に適していますので将来性もあります。

リピーターや提携する施設が増えるまでは年収も少なめですが、副業をしやすい働き方でもありますので、生活が苦しくなることもありません。現状の働き方に疑問を感じているなら、訪問美容師という働き方を検討してみてはいかがでしょう。