訪問美容の開業準備まとめ!必要な資格と開業資金の調達方法を詳しく解説

収入が少ないのに仕事は忙しくて自由な時間もほとんどない。そんな環境にある理容師さんも多いようで、最近は訪問美容の開業を検討している人も増えています。ただ開業するといっても、何から手を付けていいかわからず、検討が進んでいないという人もいるかと思います。

そこでここでは、訪問美容を開業するために必要な資格や手続き、開業資金の調達方法について解説していきます。訪問美容開業のための最低条件をしっかりと把握して、独立に向けての準備を進めていくための参考にしてください。

訪問美容師になるために必要な資格

それではまず、訪問美容師になるための資格や取得しておくと有利になる資格、訪問美容を行うための条件についてご紹介します。

必須の資格は「美容師免許」だけ

訪問美容師になるために必要な資格は美容師免許だけ。美容師免許さえ持っていれば、スタイリストでなくアシスタントでも訪問美容師を名乗って開業できます。反対にどれだけ経験を積んでいても美容師免許を持っていないと違法になります。

これを読んでいる人はすでに美容師免許の免許は取得しているかと思いますが、美容師免許を収録する手順を簡単に説明しておきます。

必要なこと

  • 厚生労働大臣が指定する美容学校を修了
  • 美容師免許国家試験に合格する

まずは厚生労働大臣が指定する美容学校に入学して、美容師の基礎を学びます。修了後したら美容師免許国家試験を受験し、合格すると美容師免許の申請ができます。

申請しないと美容師の免許証は発行されませんのでご注意ください。自動車免許などと違い、1度取得すれば更新はありません。

ちなみに理容師でも訪問しての業務は可能で、その場合には「訪問理容」になります。美容師の資格がない場合には、理容師に認められている範囲の業務しかできませんのでご注意ください。

取得しておくと有利になる資格

美容師免許を取得していれば誰でも訪問美容師になれますが、それだけでいきなり独立するのはおすすめしません。訪問理容のお客さんは要介護の高齢者が多く、訪問理容や介護に関する知識があることを証明できない場合には、安定した仕事の依頼を請けられません。

正しい知識やスキルがあることを証明するために、下記資格を所有しておきましょう。

おすすめ資格

  • 訪問福祉理美容師
  • アメイクセラピスト(訪問福祉理美容師)
  • 介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)

すべての資格を取得する必要はありませんが、訪問理容師としての資格と介護職員初任者研修を組み合わせると、開業してから有利になります。それぞれの資格について詳しく見ていきましょう。

訪問福祉理美容師

介護に関する基礎知識と、訪問美容に必要な技術が身についていることを証明するための資格で、日本理美容福祉協会が認定しています。自宅学習と実技講習だけで取得できるため、ハードルが低く、訪問美容を開業するなら確実に取得しておきたい資格です。

認定団体:日本理美容福祉協会
受講条件:理容師・美容師の資格所有
認定基準:自宅学習と2日間の実技講習の学習プログラム
受講料:27,000円

ヘアメイク・セラピスト

ヘアメイク・セラピストは日本訪問理美容推進協会が認定する資格で、事前学習と1日の講習を受講することで認定されます。個人宅での訪問理美容に関する基礎技術や基礎知識を学べて、受講後もしっかりとサポートを受けられます。

認定団体:日本訪問理美容推進協会
受講条件:理容師・美容師の資格所有
認定基準:事前学習と1日の講習
受講料:27,500円(再受講 6,600円・会員無料)

介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)

介護職員初任者研修は介護の基礎知識とスキルを証明するための資格で、自宅学習とスクリーニングのカリキュラムを受講し、修了試験に合格すると認定されます。国家資格ではありませんが、国が主体となって展開しているため、全国どこでも通用する資格となっています。

認定団体:各都道府県が指定したスクール
受講条件:なし
認定基準:カリキュラム修了後、修了試験に合格
受講料:4万〜9万円(スクールによって異なります)

訪問美容が認められる条件

美容師免許を取得していれば訪問美容師にはなれますが、実は訪問美容を受ける側に制限があります。美容はヘアサロンなど定められた場所で行う必要があり、自宅でカットやパーマを受けられるのは、ヘアサロンなどに行けない人に限られています。

具体的には下記のいずれかに該当する場合、訪問美容が認められています。

施術OK

  • 1.疾病などにより、サロンに行けない人への施術
  • 2.婚礼などの儀式に参列する人に対する儀式直前の施術
  • 3.養護老人ホーム、児童養護施設などの施設における施術
  • 4.港湾に停泊中の船舶における、乗組員への施術
  • 5.興行場などにおいて、演芸する人に対する出演直前の施術

訪問美容が認められているのは、この5つの条件いずれかに該当するときのみ。訪問美容の仕事ですと、1に該当する自宅介護を受けている高齢者や、3に該当する介護施設などでのヘアカットがほとんどです。

また、ヘアサロンなどの定められた場所以外で施術する場合には、できるだけ同じ環境を整える必要があるため、携行品が定められています。どのような器具が必要なのか見ていきましょう。

訪問先に携行する器具

  1. 洗浄及び消毒済みのはさみ等の理容器具・美容器具と、これらを衛生的かつ安全に収納できるもの
  2. 使用済みのはさみ等の理容器具・美容器具を、安全に収納できるもの
  3. 消毒された布片類・タオルと、これらを衛生的に収納できるもの
  4. 外傷に対する救急処置に必要な薬品及び衛生材料
  5. 手洗いに必要な石ケン、消毒液など

引用元:出張美容に関する衛生管理要領について

訪問美容を開業するための必要な届け出

訪問美容の資格を取得するのとは別に、個人で開業するのであればいくつかの届け出が必要になります。どのような届け出が必要なのかご紹介しますので、忘れずに提出しておきましょう。

開業するなら開業届を提出する

訪問美容を事業として始める場合には、税務署で次の2つの申請を行いましょう。

申請

  • 開業届
  • 青色申告承認申請書

事業を開始するときには、どのような仕事でも税務署に開業届を提出する義務があります。ただし罰則はないため開業届を出していない人もいるようですが、青色申告ができませんし、補助金の助成などを受けられなくなるので、必ず提出しておきましょう。

合わせて青色申告承認申請書も提出しておきましょう。複式簿記による記帳が必要になりますが、最大65万円の控除を受けられるため、支払う税金額が減ります。少しでも収入を増やしたいという人は、青色申告承認申請書の提出を忘れないようにしてください。

自治体によっては届け出が必要

自治体によっては、訪問美容を行うために届け出が必要です。たとえば和歌山市では次の書類を提出しなくてはいけません。

届出

  • 理・美容師出張業務届
  • 理容師免許証又は美容師免許証の写し
  • 結核及び皮膚疾患の有無に関する医師の診断書(発効後3か月以内のもの)
  • 器具類の携行品並びに器具類の洗浄及び消毒設備等を確認できるもの(持参可)

自分の拠点がある自治体ではなく、訪問する先の自治体のルールに従う必要があります。営業範囲を決めたら、その市区町村ごとに届け出が必要なのかどうかを確認してください。

訪問美容開業に必要な開業資金調達方法

訪問美容は自分でサロンを開店するよりは、低予算でスタートできます。ただし、ホームページを作成したり、訪問のための車を購入したりと、人によってはまとまった金額の資金が必要になります。

ここでは訪問美容を開業するのに必要な資金の目安と、どのようにして調達すればいいのか、その方法についてご紹介します。

開業に必要な費用の目安

各項目 費用相場
美容道具 5万〜10万円
シャンプー台等 5万〜15万円
移動車 30万〜80万円
ホームページ作成 0〜10万円
チラシ作成 1万〜2万円
名刺作成 2千〜1万円

すでに車を持っているのでしたら、20万円程度の資金でスタートすることも可能ですが、移動用に車を購入するとなると、トータルで100万円を超えてしまいます。さらにこれらに資格取得費用が必要になります。

サロン時代にしっかりと貯金していたなら、それを開業資金に充てることも可能ですが、開業してしばらくは固定客もおらず、生活費を稼ぐことも難しいので、貯金はできるだけ生活費として確保しておき、資金は金融機関等から調達するのがおすすめです。

資金が足りないときの調達方法

開業するのに十分な資金がない場合には、下記のいずれかの方法で調達しましょう。

資金調達

  • 日本政策金融公庫から借りる
  • 制度融資を利用する
  • 金融機関から借りる
  • 親族や知人から借りる

それぞれの調達方法について見ていきましょう。

日本政策金融公庫から借りる

日本政策金融公庫は国が100%株式を保有している金融機関で、中小企業や小規模事業者を支援しています。新規事業を立ち上げるときには、新規開業資金として最大7,200万円まで、低金利で融資してもらえます。

資金調達だけでなく、開業するにあたっての相談やセミナーの受講などもでき、開業経験のないという人でも、しっかりとサポートを受けられます。

制度融資を利用する

制度融資は地方自治体と金融機関が連携した融資制度で、中小企業や小規模事業者の資金調達をサポートしています。自治体ごとに制度内容が多少違うものの、いずれの地域でも低金利かつ長期間の借り入れができ、もちろん開業資金にも利用できます。

利用するにはまず自治体の窓口で相談し、その後、指定された金融機関で融資の申し込みを行います。

金融機関から借りる

お金を借りるとなると銀行を思い浮かべる人もいるかと思いますが、これから事業を始める人に対して、銀行が融資することはほとんどありません。銀行は実績のある事業にのみ融資する金融機関だと考えてください。

これから開業するなら、地域密着型の信用金庫がおすすめです。信用金庫は地域の活性化を目的としているため、訪問美容のようにこれからのニーズが期待される事業であれば、融資を受けられる可能性があります。

親族や知人から借りる

どこからも融資を受けられないのであれば、親族や知人を頼りましょう。きちんとした事業計画書を作成して、丁寧に説明することで、融資してくれる人が出てきます。ただし、これまでの信頼関係なども重要になりますので、人によっては1円も借りられない可能性もあります。

また、返済できなかったときには、お互いの関係が壊れてしまうというリスクもあります。そういう意味ではあまりおすすめではありませんが、まずは親に相談してみましょう。本気度が伝われば融資してもらえるかもしれません。

まとめ

美容師免許さえあれば訪問美容を開業できますが、訪問美容や介護に対する知識がゼロというのでは、誰も依頼してくれません。訪問福祉理美容師、ヘアメイクセラピスト、介護職員初任者研修といった資格を取得して、最低限の知識とスキルを身につけておきましょう。

開業する場合には、税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出するのも忘れないこと。また、訪問美容を行うための届け出が必要な地域もありますので、自治体のHPなどでチェックして、必要に応じて申請してください。

訪問美容をスタートしていきなり稼ぐのは難しいので、貯金は生活費として確保し、開業に必要な資金は日本政策金融公庫や制度融資を活用して、借りるのがおすすめです。初年度は思った以上に稼げませんので、サロンに勤めているうちにしっかりとお金を貯めておきましょう。