寝たきりでも大丈夫?要介護4〜5で訪問美容を利用するときの注意点

親が要介護4〜5の寝たきりになったけど、元気だった頃は身だしなみにも気を遣っていたから、できれば定期的にヘアカットしてあげたい。そんな想いを持っている方もいるかと思います。しかしながら、寝たきりだとヘアサロンに行けませんし、自分で切るのもうまくできるか不安ですよね。

そういうときに訪問美容を利用できればいいのですが、寝たきりの要介護者でも対応してもらえるのかわからず、困っている人もいるますよね。そこで、ここでは寝たきりでも訪問美容を利用できるのかどうか、利用できるならどのような点に注意すればいいのかなどをご紹介していきます。

要介護4〜5の寝たきりでも訪問美容は利用できる

まずは結論からお伝えしますが、寝たきりになった人でも問題なく訪問美容を利用できます。むしろ訪問美容は要介護4〜5(事業者によっては要介護3〜5)の人を対象としたサービスです。椅子に座れないような状態であっても、髪を切ってもらえます。

ただしすべての事業者が寝たきりに対応しているわけではなく、寝たきりと聞いて断ってくる事業者も少なくありません。

寝たきりの状態というのは姿勢を変えることも難しく、しかもヘアカット後には髪の毛がベッドに散乱しており、時間をかけて掃除することになります。姿勢をかえるときに、支え方を間違えてもしものことがあると大変です。

そのような理由から「寝たきりはNG」としている訪問美容師もいますが、きちんと介護の基礎知識を身につけて、さらには資格も取得している訪問美容師も増えつつあります。すでにしっかりとしたノウハウがあり、社内研修により訪問美容師を育てている事業者もあります。

最初は相談だけでもいいので、寝たきりになった両親の身だしなみを整えてあげたいと思うなら、訪問美容を検討してみましょう。ただし、気をつけなくてはいけないポイントなどもありますので、まずは最後まで読み進めてください。

介護専門の訪問美容事業者に依頼する

訪問美容の仕事は美容師免許を持っている人なら、誰でもすぐにスタートできます。美容学校を卒業して試験に合格したばかりという人でも、個人事業主として訪問美容の仕事をはじめていたり、ヘアサロンが出張サービスとして提供していたりします。

そのような事業者は介護の知識がないケースも多く、介護が必要となる寝たきりの方へのヘアカットには不向き。寝たきりの方への訪問美容は、要介護者へのヘアカットを専門的に行っている訪問美容事業者を選びましょう。

介護専門の訪問美容事業者のメリット

寝たきりの訪問美容に介護専門の訪問美容事業者をおすすめする理由は、下記のメリットがあるためです。

オススメ理由

  • 介護の基礎知識を身につけている
  • 寝たきり状態でのヘアカットノウハウがある
  • ヘアカットのスピードが速い

それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。

介護の基礎知識を身につけている

介護専門で訪問美容を行っている事業者は、所属している美容師への教育もしっかりとしているため、介護のノウハウを持った美容師が派遣されます。しかも要介護者を中心にヘアカットしているので、経験も豊富で任せられるといった安心感もあります。

寝たきり状態でのヘアカットノウハウがある

寝たきりの場合には仰向けの状態でカットしますので、寝たきり状態でのカットに慣れていない人が対応すると、起き上がったときにアンバランスな仕上がりになりがち。ところが介護専門の訪問美容師は寝たきり状態でのヘアカットノウハウがあり、美しく仕上げてもらえます。

ヘアカットのスピードが速い

要介護4〜5になると、長時間のヘアカットに体が耐えられないこともあります。それなのにマイペースでゆっくりとカットされると、見ていて不安になりますよね。介護専門の訪問美容師なら、負担が最小限になるように短時間で髪の毛を切ってくれます。

信頼できる事業者なら介護専門でなくてもOK

寝たきりの状態なら介護専門の訪問美容事業者に依頼するのが確実ではあるものの、ヘアサロンの訪問美容や、個人の訪問美容師が必ずしもNGというわけではありません。確実なのが介護専門の事業者というだけであり、その他の事業者でも信頼できる人がいるなら、依頼してもOKです。

たとえばケアマネジャーやお世話になっている介護施設が紹介してくれた人なら、介護に対する知識が十分にあり、すでに介護関係者から信頼されているわけですから問題ありません。介護職員初任者研修などの資格があり、すでに何年も実績がある事業者も同じく信頼できます。

ポイント

介護の知識と実績を備えているという点です。

反対にどれだけ有名なヘアサロンのスタイリストであっても、介護についてまったく知識がないという場合にはおすすめしません。正しい知識と実績のある訪問美容師に依頼しましょう。

訪問美容に自治体の助成制度を活用しよう

寝たきりの方が訪問美容を利用してヘアカットする場合、自治体によっては助成制度を用意しており、その場合には金銭的な負担が軽減されます。どのような助成を受けられるのか、実例をいくつかご紹介します。

地域 対象者 助成内容
東京都北区 40歳以上で介護保険の要介護4・5 2,000円で美容師派遣
東京都渋谷区 65歳以上で介護保険の要介護4・5 高齢者 理容券・美容券交付(年4枚)
相模原市 65歳以上で介護保険の要介護4・5 助成券(1枚3,000円)を年間最大6枚交付
東大阪市 65歳以上で介護保険の要介護3〜5 訪問に要する費用を市が負担

助成内容はこのように、自治体ごとに違いますが、事業者に直接依頼するよりも金銭面での負担が小さくなります。しかも自治体と提携している訪問美容事業者があり、自分で信頼できる事業者を探さなくてもいいといったメリットもあります。

自治体の助成制度を活用しないのはもったいないので、まずは利用できる制度があるか調べてみましょう。調べ方も含めて、どのような流れで利用すればいいか見ていきましょう。

自治体の助成制度を利用する流れ

STEP.1
市役所などに問い合わせをする
STEP.2
申請に必要な書類を用意する
STEP.3
指定された場所で助成制度の申請する
STEP.4
助成を受ける

まずは市役所のホームページを確認したり、電話で問い合わせしたりして、訪問美容の助成制度があるかどうかを確認しましょう。ケアマネジャーに相談するのもOKです。助成制度がある場合には、申請に必要な書類を確認しておきましょう。

書類を用意したら指定された場所で申請してください。提出書類に不備がなく、申込条件もきちんと満たしていれば問題なく助成してもらえます。

寝たきりで訪問美容を利用するときの注意点

寝たきりでの訪問美容は事業者選びがとても重要だとお伝えしましたが、利用するときに気をつけなくてはいけないポイントがいくつかあります。どのような点に注意すればいいのか、詳しく見ていきましょう。

介護できる人が近くで待機してサポートする

介護の知識を持った訪問美容師が対応してくれる場合でも、1人でできることには限りがあります。家族やヘルパーさんなどのサポートが必要になることもありますので、訪問美容を利用するときには、必ず誰かがサポート役として近くで待機しましょう。

事前に要介護者と話をして、どのようなヘアスタイルにしたいのかも確認し、それを美容師の方に伝えるといった役割もあります。要介護4〜5になると美容師と直接コミュニケーションをとるのが難しいケースも多いので、そのような面でもサポートしてあげてください。

ちなみに要介護者を介護している人も、訪問美容で髪を切ってもらうことも可能です。介護で家を離れられないという人は、一緒にカットしてもらいましょう。

ヘアカットする環境を伝えておく

寝たきりといっても、椅子に座ってヘアカットできる人もいれば、ベッドから離れられない人もいます。まずはどのような状態でヘアカットすればいいかを事業者に相談し、ベッドで施術すると決まったら、ベッド周りの状況をできるだけ詳しく伝えましょう。

ベッドが部屋の角にあって移動させるのが難しい場合と、部屋の中央に移動させられるのではヘアカットの難易度が違います。写真などを使って事前にヘアカットする環境を伝え、事業者の指示に従って、施術しやすい環境を整えておいてください。

体調が悪くなったら無理に施術しない

寝たきりの高齢者の場合は日によって体調が違うことも多く、訪問美容を予約していたタイミングで体調を崩してしまうことも考えられます。そういうときは、すみやかに事業者へ連絡して、別の日に変更してもらってください。

事業者によってはキャンセル料が発生します。事業者を選定するときに、必ずキャンセル料について確認しておき、トラブルにならないように注意してください。普段から体調に波がありキャンセルも考えられる場合には、キャンセル料が発生しない事業者を選ぶのもおすすめです。

まとめ

親が寝たきりになったけど、健康な頃から身だしなみを大切にしていたのであれば、本人の意識がしっかりとしていなくても、ヘアスタイルは美しい状態にしてあげたいですよね。訪問美容は寝たきりの高齢者にも対応していますので、安心してご利用ください。

ただし、訪問美容事業者であれば誰もいいというわけではなく、寝たきりの場合には介護に関する知識や実績を備えている事業者に依頼する必要があります。介護専門の訪問美容事業者に依頼するか、ケアマネジャーなどから紹介された信頼できる事業者にお願いしましょう。

要介護4〜5になると、髪を切れるだけの訪問美容師では、いざというときに対応しきれませんので、実績のない事業者はいくら料金が安くても選択肢から外すこと。できるだけ安く訪問美容してもらいたいなら、自治体の助成制度をご活用ください。