訪問美容は要介護者など、限られた人しか利用が認められていません。ではその認可というのはどのような仕組みになっているのでしょう。髪を切りたいだけなのに、市役所などに行って手続きをして、認可を待たなくてはいけないのでしょうか。
これまで訪問美容を利用したことがないと、そのような基本的なところからわからず困っている人もいるかと思います。そこで、ここでは訪問美容を利用するときの手続きの考え方と、実際に利用する時の手順、訪問美容師の選び方について解説していきます。
訪問美容は手続きなしで利用できます
訪問美容は利用できる条件が定められており、認められている人しか利用できません。ただ、利用者側としては認可証明などの手続きは必要なく、自分の状態を訪問美容事業者に伝えて、事業者が対応の可否を判断します。
事業者のさじ加減ひとつで決めて大丈夫なの?と思うかもしれませんが、髪が短い人だとヘアカットは月1回のペース。そのたびに自治体などに判断を仰ぐのは非効率ですので、認めるかどうかの判断は現場レベルで行われます。
そもそも美容師や理容師といった人たちは国家資格取得者であり、訪問美容の可否判断をできるだけの知識を備えています。もちろん個人の判断に委ねることになるため、判断が難しい場合には美容師ごとに見解がわかれることもあります。
そのようなイレギュラーなケースもありますが、訪問美容を利用できるかどうかを決める権限は、美容師(事業者)にあると覚えておいてください。
認められていない人への訪問美容は美容師が罰せられる
美容師が判断するなら、明らかに訪問美容の対象外の人でも、仲のいい美容師にお願いしたら融通を利かせてくれそうですが、それはNG。
訪問美容を認められていない人へのヘアカットは処罰の対象になり、何度も繰り返していると免許を停止させられることもあります。
美容師にしてみればデメリットしかありませんので、認められていない人へのヘアカットはまず間違いなく断ります。友人に美容師がいると「家でヘアカットしてよ」とお願いしたくなりますが、迷惑をかけるだけですので、そのような依頼はしないように注意してください。
訪問美容が認められる条件
認められた人なら手続きなしで、訪問美容できるとお伝えしてきましたが、そもそもどんな条件なら認められるのかが気になりますよね。そこで訪問美容が認められる条件をリストアップしていきます。
条件
- 要介護でヘアサロンに行くのが難しい
- 介護をしていて長時間自宅を離れるのが難しい
- 病気やケガで医師から自宅療養を指示されている
- 障がいがありヘアサロン行けない
- 妊娠中や育児中
- 結婚式や成人式に参列する
- 演劇などに出演する
基本的にはヘアサロンなどで髪を切るのが難しいケースで、訪問美容が認められると考えてください。一般的なのが要介護者で、他にも病気やケガで自宅から出られない人や、妊娠中や育児中で体に負荷をかけられない人も訪問美容の対象になります。
また、結婚式や成人式に参列する場合や、演劇などの出演する場合も例外的に訪問美容が認められます。
事業者は手続きが必要なケースもある
訪問美容を利用する側は手続きをしなくてもいいのですが、事業者は訪問美容をするために手続きが必要になるケースがあります。利用するうえで知っておいたほうがいい知識ですので、どのような手続きが必要になるのか頭に入れておき、事業者を選ぶときの参考にしてください。
美容師免許は必須
訪問美容をするためには、美容師免許必要になります。これは訪問美容に限ったことではなく、ヘアサロンでヘアカットする場合も同じです。髪を切るだけなのに免許がいるの?と思うかもしれませんが、美容師になるには衛生管理の知識なども必要で、それらの知識を証明するために免許は必須です。
店舗や事業所を構えて訪問美容を手掛けているような場合には、免許を持っていない人が派遣されることはありませんが、個人の訪問美容師の中には無免許で営業している人もいる可能性がありますので、ご注意ください。
自治体への手続きが必要なケースも
免許さえあれば誰でも訪問美容師になれますが、自治体によっては登録手続きが必要になるケースがあります。いくつか例を挙げておきます。
さいたま市「出張理容届」「出張業務衛生管理等の概要」「診断書」
船橋市
「出張理容届」「医師の診断書」
大分市「出張業務管理施設設置届」「出張業務届出書」
これらの手続きは施術を受ける場所の自治体ごとに必要です。このため利用するときには、自宅住所の市区町村でどのような対応になっているのかを、把握しておかなくてはいけません。もし手続きが必要になっているのであれば、届け出を提出している事業者から選びましょう。
訪問美容を予約するための手順
ここまでの説明で、訪問美容における手続きについて理解できたかと思います。次に、実際に利用するときは、どのような手順で行えばいいのかを見ていきましょう。大きな流れは下記のようになります。
それぞれの手順について、注意点などを詳しく見ていきましょう。
STEP1.事業者を選定する
まずは事業者の選定です。ここでは自分の用途に適した訪問美容事業者を探します。訪問美容事業者は下記の3タイプに分類でき、それぞれに得意不得意があります。
3つのタイプ
- 介護専門訪問美容
- ヘアサロンの訪問美容
- 個人の訪問美容師
それぞれの特徴を簡単にご紹介します。
介護専門訪問美容
要介護者への訪問美容を得意としているのが介護専門訪問美容で、所属している美容師は介護の基礎知識があり、介護の資格を持っている人もいます。安心して任せられるので、高齢者で介護が必要な人におすすめです。
ヘアサロンの訪問美容
ヘアサロンの訪問美容は、高いクオリティのヘアカットを自宅などでしてもらえるのが特徴で、妊娠中や育児中、病気、ケガなどで一時的に、ヘアサロンに行けない人に適しています。結婚式や成人式に参列するというときも、ヘアサロンの訪問美容を利用しましょう。
個人の訪問美容師
年金暮らしでお金があまりない人は、リーズナブルな料金で対応してもらえる個人の訪問美容師がおすすめ。高いスキルを持ったスタイリストが副業で訪問美容をしていることもあれば、美容学校を卒業したばかりという人もいて、美容師ごとのスキルや提案力にバラツキがあります。
STEP2.事業者に連絡し料金を見積もってもらう
依頼する事業者が決まったら、料金の見積もりをしてもらいます。口頭だけでは金銭トラブルになることもあるので、メールやLINEのテキストベースでも構いませんので、必ず記録に残すようにしてください。
このときに事業者の電話対応などもチェックして、不安が残るような対応をされた場合には、他の事業者に乗り換えましょう。わかりやすく丁寧に説明してくれる事業者であれば、訪問時も同じクオリティを期待できます。安心して任せられると感じた事業者に依頼しましょう。
STEP3.金額とサービス内容に問題なければ契約
提示された金額とサービス内容に問題なければ、スケジュール調整して施術日を決めましょう。訪問美容は準備や後片付けなどもあり、ヘアサロンでのヘアカットよりも時間がかかります。できるだけ、訪問美容の直後に予定がない日を選びましょう。
また、契約する前にキャンセルとなった場合の対応を確認しておきましょう。当日になって体調不良になることも想定して、そのようなときのキャンセル料や、別日へのスライドが可能なのかを確認しておいてください。
STEP4.予約した日にヘアカットと支払い
あとは予約した日にヘアカットして、訪問美容代金を支払えば完了です。通常は当日現金払いですが、事前のクレジットカード決済に対応している事業者もあります。当日支払いはトラブルになることもあるため、事前のクレジットカード決済がおすすめです。
満足度がアップする訪問美容事業者の選び方
訪問美容は美容師のスキルやコミュニケーション能力によって、満足度が大きく変わります。自分と相性のいい人が担当者になればいいのですが、そうでない場合には、自分のイメージとは違った仕上がりになることもあり、訪問美容にがっかりすることになります。
それを避けるために、ここでは満足度が高くなる訪問美容事業者の選び方をご紹介していきます。
知り合いに訪問美容師を紹介してもらう
最もおすすめなのは、すでに訪問美容を利用している人に紹介してもらうことです。同じような境遇の人で訪問美容を利用している人がいれば、どの事業者に依頼しているか教えてもらいましょう。その人が満足していることが前提ではあるものの、これで失敗するリスクが大幅に下がります。
紹介された側も「◯◯さんのつながり」ということで、丁寧に対応してもらえるはずです。まずは身の回りに、訪問美容を利用している人がいないか探してみましょう。介護を受けているなら、ケアマネジャーやお世話になっている介護施設に相談するのもおすすめ。
口コミでの評価が高い事業者を選ぶ
身近なところで訪問美容を利用したことのある人がいないなら、口コミで事業者の絞り込みを行いましょう。大手であればSNSやGoogleMapなどに口コミが掲載されていますし、個人の訪問美容師なら、くらしのマーケットなどで確認できます。
利用者が高く評価しているなら、同じクオリティを期待できます。特にリピート利用している人が多ければ、接客応対も含めて満足度の高いヘアカットになります。できる範囲でいいので、しっかりとリサーチした上で選びましょう。
実績がある事業者を選ぶ
訪問美容事業者としての実績があることも、選ぶときには重要なポイントです。まだ立ち上げたばかりという事業者や、独立したばかりという個人の訪問美容師だと、訪問美容に慣れていないため、思わぬところでトラブルになることも考えられます。
選択肢がいくつかあるなら、できるだけ実績重視で選びましょう。
まとめ
訪問美容はヘアサロンなどに行って、ヘアカットができないと認められた人のみ利用できますが、認可のための手続きは不要。国家資格を取得している美容師や理容師が状況を総合的に判断して、依頼を請けるかどうかを決定します。
ただし地域によっては、訪問美容するための届け出が必要になることもあります。自宅がある住所の自治体で手続きが必要かどうかをチェックしておき、必要だった場合には届け出を提出したかどうかを確認しておきましょう。
また、ヘアカットの満足度は美容師によって大きく変わります。満足度の高い訪問美容を期待するなら、まずは知り合いに紹介してもらうか、口コミでの評価が高い事業者に依頼してください。それが難しい場合には、実績がある事業者から選ぶのがおすすめです。