訪問美容は衛生面で問題ない?感染症リスクを最小限に抑えるためのコツ

日本には理容師法や美容師法という法律があり、保健所が確認した場所以外でのヘアカットが禁止されています。衛生管理されていない環境でヘアカットすることで、感染症が広まるのを防ぐためですが、ヘアサロンに行けない人は例外として、自宅でヘアカットしてもらえます。

自宅でヘアカットしてもらえるのはありがたいことですが、理屈からすると衛生管理ができていない場所で施術することになるので「それって本当に大丈夫なの?」と疑問に感じている人もいますよね。そこでここでは、訪問美容と衛生管理の関係について、詳しく解説していきます。

衛生面で問題があると判断されたら断られる

まずは自宅という環境で、十分な衛生管理ができるのかという問題についてお伝えします。これに関しては「美容師が施術できると判断したのであれば、衛生環境は問題ない」というのが結論です。これだけでは納得できないかと思いますので、もう少し詳しく解説していきます。

美容師は衛生管理のプロ

まず知っておいてもらいたいのは、美容師が衛生管理のプロだということです。美容師なんて髪を切っているだけでしょ?と思うかもしれませんが、美容師は国家資格保有者で、美容学校で衛生管理に関する知識をしっかりと身につけています。

ヘアサロンのアシスタントになるとヘアサロンの掃除を徹底させられ、美容師の中にはスタイリストに昇格しても掃除は自分で行う人もいます。掃除が徹底されているお店はお客さんにとって居心地がいいだけでなく、衛生管理の基本だと知っているからです。

ヘアサロンで感染症が広まったら、業務停止処分が出されてしまいます。 そのことによりお客さんが離れてしまいますので、衛生管理は美容師にとって死活問題。私たちが思っている以上に、美容師は衛生管理について徹底していることを覚えておきましょう。

衛生的な環境でのみ施術する

美容師は衛生管理の意識がとても高く、正しい知識を備えていますので、訪問先が衛生的ではないと判断したら訪問美容を断ります。たとえばネズミが走り回っていたり、湿気が多くてカビだらけだったりする住宅などでの依頼は受けてくれません。

それを個人の判断で任せてもいいの?と疑問に感じるかもしれませんが、そのために美容師は国家資格になっているわけです。

誰もがヘアサロンに通えるわけではありませんので、訪問美容は必要なサービスです。ただ訪問先ごとに保健所が確認するのは現実的ではありません。だから美容師が保健所に代わって、訪問先の環境を確認したうえでヘアカットしているのだと考えてください。

美容師が「ここは衛生的で大丈夫です」と説明することはありませんが、美容師がOKをしたということは、衛生面でも問題がないと判断したという意味でもあります。安心して訪問美容でヘアカットしてもらいましょう。

訪問美容師が実施している衛生管理

美容師が国家資格で、全員が衛生管理をしっかりしていると聞いても、まだ信用できないと思っている人もいるかもしれませんので、ここでは訪問美容師がどのような衛生管理をしているかをご紹介していきます。

健康確認は毎日行う

美容師も一般人と同じ暮らしをしていますので、感染症などにかかってしまう可能性はあります。このためヘアサロンでは、管理美容師免許を持った人がスタッフの健康管理を毎日行い、感染症にかかった場合には保健所に届けることが定められています。

ヘアサロンですと予約した人に迷惑をかけるため、風邪くらいでは美容師を休ませない店舗も多かったのですが、最近は38℃以上の熱があるような場合には休ませるなどのルール決めをしている店舗も増えているようです。

さらに訪問美容の場合は、換気が十分ではない環境で、免疫力の低い高齢者のヘアカットをすることも多いので、ヘアサロンよりも厳しい基準で業務についていいか判断しています。

清潔な作業服を着用し、マスクを着用して施術する

美容師というとラフな服装でヘアカットするというイメージがあるかもしれませんが、実際には清潔な作業服を着用して施術します。病院のような白衣ではないため、作業服が私服に見えるかもしれませんが、普段着で施術するようなことはありません。

以前はマスクを着用していない訪問美容師もいましたが、新型コロナウイルスの感染拡大以降は、ほぼすべての訪問美容師がマスクを着用しています。

消毒した清潔な器具を使用する

美容師が使うハサミやクシなどは、1人の施術が終わるごとに洗浄や消毒をして、清潔な状態にしています。このときにどのように器具を消毒するのかまで細かな規定があり、ヘアサロンだけでなく訪問美容であっても清潔な器具を使うのが基本。

もちろん洗浄や消毒した器具を持ち運ぶ容器は、清潔な状態で保管できるものを使用しています。使用済みの器具と未使用の器具が混ざらないように配慮されており、さらに除菌シートなどの衛生アイテムを常備している訪問美容師もいるようです。

作業終了後にしっかりと作業スペースを清掃する

ヘアサロンでは掃除が徹底されるとお伝えしましたが、それは訪問美容でも同じです。ヘアカットをしたらそれで終了というのではなく、作業スペースをきちんと清掃してくれます。カットした髪の毛は持ち帰り、施術前と同じ状態にまで回復させます。

清掃は美容師にとって基本中の基本。それは訪問美容であっても変わることはなく、腕のいい美容師ほど手を抜くことなく清掃し、しっかりときれいな状態にして帰っていきます。

必要に応じて自治体への届け出を出す

自治体によっては訪問美容をするのに、届け出を出す必要があります。事業者ごとに申請書類だけでなく、訪問美容するスタッフの健康診断書や、器具の管理方法がわかる書類も提出し、安全であることを示さなくてはいけません。

手間のかかる作業ではありますが、訪問美容の事業所はこのような届け出も提出しており、きちんと自治体の許可を得て営業しています。

依頼者が意識すべき衛生管理のポイント

訪問美容で衛生管理を徹底するには、利用する側の協力も必要になります。自分が依頼するときに、どのような点に気をつければいいのか、詳しく見ていきましょう。

自宅をきれいに掃除しておく

まずは衛生管理の基本である清掃です。作業スペースとなる部屋は掃除機をかけるなどして、きれいな状態にしておきましょう。作業スペースそのものは2畳程度あればいいのですが、部屋そのものが汚れていたのでは施術には適しません。

きれいな部屋を維持することは、介護をするにしても、子育てをするにしても重要。できれば訪問美容に関係なく、いつもきれいな状態を保ってください。

換気ができる場所にスペースを確保する

ヘアサロンと自宅の大きな違いは、換気設備があるかどうか。ヘアサロンにはしっかりとした換気設備がありますが、自宅の場合はそこまで設備が充実していません。さらに部屋の場所によっては空気が淀んでしまう場所もあります。

ヘアカットスペースとしては空気が淀むような場所は避けて、しっかりと換気できる場所に施術スペースを確保しましょう。自分で判断できない場合には、2〜3ヶ所候補の場所を確保して、あとは美容師に選んでもらうというのもおすすめです。

ペットは別の部屋に隔離する

もし犬や猫などのペットを飼っているなら、施術中は別の部屋に隔離しておいてください。衛生管理を考えると、作業スペースにペットが入ってくるのは絶対にNGで、いくらしつけができていても、美容師が訪問美容を断る可能性があります。

隔離する部屋がない場合には、誰かに預かってもらうかペットホテルなどに預けましょう。ただし身体障害者補助犬などは問題ありません。この場合には近くで待機させておきましょう。

できるだけシャンプーもセットで依頼する

訪問美容はヘアカットだけでお願いすることも可能ですが、シャンプーしないままベッドで休むと、落としきれなかった短い毛が枕などに付いてしまいます。そのままにしておくと、ダニなどの餌になりますので、そうならないためにシャンプーで、短い毛を落としてもらいましょう。

予算の関係でどうしてもヘアカットだけにしたい場合には、髪の毛を切り終えたらすぐに自分でシャンプーしてください。特に短くカットした場合には、小さな毛がたくさん頭に残っていますので、そのままベッドで横にならないように気をつけましょう。

体調が悪いなら延期してもらう

美容師も38℃以上あれば休むこともあるとお伝えしましたが、利用する側もやはり熱があるなら別の日に延期してもらうのがおすすめです。自分が感染源になる可能性もありますし、何よりもヘアカットで体力を消耗して、体調がさらに悪化することも考えられます。

キャンセル料が発生する場合には、ムリしてでも施術してもらいたくなりますが、体調不良での延期であれば、無料で対応してくれることもあります。訪問美容事業者に体調不良であることを伝えて、延期可能か相談してみましょう。

賠償責任保険に加入している訪問美容師に依頼しよう

訪問美容師や利用する人がどれだけ気をつけても、100%感染症を防げるわけではありません。さらにハサミを使いますので、頭皮を切ってしまうなどのトラブルが発生する可能性もありますので、それらに対して備えたい場合には、賠償責任保険に加入している訪問美容事業者がおすすめ。

ただし事業者が加入している賠償責任保険ごとに補償の範囲が違いますので、どの範囲まで補償されるのかは事前に確認しておく必要はあります。

確認事項

  • 訪問美容事業者が賠償責任保険に加入しているか確認
  • 加入している場合には補償内容を確認する
  • 納得した上でヘアカットを依頼する

このような流れで訪問美容事業者を選んでください。

実際に保険を利用することはまずありませんが、保険に加入している事業者は万が一のことも想定しており信頼できます。事業者選びの基準として、賠償責任保険に加入しているかどうかをチェックしておきましょう。

まとめ

訪問美容を利用するうえでとても大事なのが、自宅でもヘアサロンと同じくらいの衛生管理ができることです。最近はどの家庭も掃除が行き届いており、美容師がNGとすることはほとんどありませんが、あまりにもひどい環境だと断られることもあります。

美容師は衛生管理のプロですが、訪問美容を安全にするには利用者側の協力も必要。ヘアカットスペースはできるだけ換気できる環境を選び、日頃からきれいに掃除しておくこと。そして、施術中にペットが入ってこないように、別の部屋に隔離してください。

もしものときに備えて、賠償責任保険に加入している事業者に依頼するというのも重要です。実際に必要にならないことが理想ですではあるものの、訪問美容に100%の安全はありません。できるだけ賠償責任保険に加入している訪問美容事業者を選びましょう。