老人ホームで髪を切れる?訪問美容の料金相場とメリット・デメリット

これから老人ホームに入居するときに、気になることのひとつがヘアカットについてですよね。外出できるなら、数ヶ月に1回程度のペースでヘアサロンなどに出かけることもできますが、寝たきりになるとそうもいきません。

そういうときにはヘルパーが切ってくれる?それとも訪問美容に自分で依頼する?いろいろとわからないことがあるかと思います。そこでここでは老人ホームでのヘアカットの現状と、訪問美容を利用した場合の料金相場、メリット・デメリットについて解説していきます。

老人ホームでのヘアカットの現状

老人ホームごとにヘアカットの考え方は違いますが、法律上は美容師免許や理容師免許を持った人でないとヘアカットできません。このため、コンプライアンスへの意識が高い老人ホームは訪問美容事業者と提携し、定期的にヘアカットの日を設けています。

ただし、すべての老人ホームが訪問美容を利用しているわけではなく、老人ホームによってはヘルパーが入居者の髪を切っていることがあります。新型コロナウイルスの感染拡大があった時期に外部の人を呼べず、ヘルパーがカットするようになった老人ホームもあるようです。

もちろんいかなる理由があっても、美容師や理容師以外の人がヘアカットするのは違法行為で、国もこれを認めていません。入居者のひげ剃りはヘルパーが日常的に行っていますが、これも当然ながら違法行為になります。

なぜ髪を切る程度のことを、ヘルパーがやってはいけないのか、免許取得者でないと対応できないのかについて詳しく解説していきます。

ヘルパーでは正しい衛生管理ができない

老人ホームでヘアカットすると、器具や施術者の手が入居者の頭皮などに触れることになります。入居者がなんらかの感染症にかかっていたのに、器具や手を洗浄・消毒しないまま次の入居者のヘアカットをしたら、その人も感染症にかかるかもしれません。

このようなことが起きないように国は美容師や理容師を国家資格にして、正しい知識を持った人だけに免許を与えています。たかが髪を切る程度のことと思うかもしれませんが、「安全に髪を切る」となると誰でもいいわけではないわけです。

いくらヘルパーに衛生管理の意識があっても、美容師免許や理容師免許を持っていないなら、やり方や手順が間違っているかもしれません。その結果、老人ホーム内で感染症が広まる可能性もあるため、ヘアカットは免許取得者だけがしてもいいと法律で定められています。

老人ホームの訪問美容は2種類ある

老人ホームで訪問美容を利用する方法は、大きく分けて2通りあります。

利用方法

  • 老人ホームが訪問美容師に依頼する
  • 個人的に訪問美容師に依頼する

通常は施設の提携している訪問美容師が、定期的に老人ホームでヘアカットしてくれますが、老人ホームによってはこのサービスをしていないこともあります。この場合には、自分で訪問美容師に依頼して老人ホームに来てもらいます。

個人で訪問美容師を呼ぶ場合には、老人ホームの許可が必要です。勝手に依頼してトラブルにならないように注意してください。

老人ホームや介護施設での訪問美容相場

老人ホームは入居一時金や月額費用などもかかりますので、訪問美容でヘアカットしてもらうにしても、あまりにも高すぎると困りますよね。でも安心してください。老人ホームでのヘアカットはかなりリーズナブルな金額設定になっています。

カット 1,500円~4,000円
パーマ 4,000円~8,000円
カラー 4,000円~8,000円

利用する訪問美容や老人ホームによって違いますが、老人ホームが訪問美容師を呼んで、複数の入居者をまとめて同じ日にヘアカットする場合には、2,000〜3,000円程度で切ってもらえます。老人ホームによってはさらに安くなることもあります。

老人ホームで提携している事業者がおらず、個人的に訪問美容師を呼ぶような場合には、ヘアカットだけで4,000円くらいかかります。このため少しでも安くヘアカットしたいなら、訪問美容師を定期的に呼んでいる老人ホームに入居するのがおすすめです。

また、訪問美容ではパーマやカラーにも対応しています。白髪染めをしたい人や、老人ホームでもおしゃれに過ごしたい人は、そちらのサービスがあるかも確認しておきましょう。

訪問美容は介護保険対象外

ヘアカットは衛生的な暮らしをするために必要なものなので、老人ホームで利用するなら介護保険の対象になるのでは?と疑問に感じている人もいるかと思います。結論からいえば、訪問美容は介護保険対象外のサービスになります。

ヘルパーがヘアカットするのもNGで、介護保険の対象外というのは理不尽に感じるかもしれませんが、そのようなルールになっていますので、自分でお金を払ってヘアカットしてもらいましょう。

自治体の助成も使えないことが多い

訪問美容は介護保険対象外だとお伝えしましたが、自治体によっては訪問美容に対して助成制度を用意しています。この助成金を使えば安くヘアカットできるのではないかと期待している人もいるようですが、残念ながら多くの助成金は「在宅」であることを条件にしています。

たとえば新潟県燕市では、要介護3・4・5の人などを対象に1回のヘアカットにつき2,500円を年2回助成していますが、対象は自宅への出張理美容のみ。介護施設や病院での訪問美容では助成金を受けられません。

自治体によっては老人ホームでも利用できる可能性はありますので、自治体のHPなどで確認するか、市役所などにお問い合わせください。

老人ホームで訪問美容を利用するメリット

ここまでの説明で、老人ホームの訪問美容がどのようなサービスなのか把握できたかと思いますが、いまいちメリットがわからないという人もいますよね。そのような人のために、ここでは老人ホームで訪問美容を利用するメリットについて解説していきます。

メリット

  • 衛生的な状態を維持できる
  • 気分転換になって気持ちが明るくなる
  • 安心してヘアカットできる

老人ホームで訪問美容を利用するメリットはこの3点です。それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

衛生的な状態を維持できる

いつもきれいな状態が保たれている老人ホームでも、髪が伸びっぱなしというのでは清潔な状態を維持するのは困難です。しかもあまりにも長すぎる髪は、老人ホームでシャンプーしてもらうときもヘルパーが大変ですし、乾かすのにも時間がかかってしまいます。

さらに、前髪が伸びすぎて目に入り、ものもらいができるといった問題も考えられます。そのようなトラブルはすべて、定期的にヘアカットすることで解決できるわけです。高齢になり免疫力が低下しているからこそ、訪問美容で髪の毛を切って、衛生的な状態を保ちましょう。

気分転換になって気持ちが明るくなる

ヘアカットは自分のイメージが変わりますので、気分転換になります。老人ホームの生活は刺激も少なく、毎日同じことの繰り返しになりやすいので、人によっては気分が沈みがち。ところがヘアカットすることで、目に見える変化が起きて気持ちが明るくなります。

子どもや孫が面会に来たときに、ヘアセットがしっかりと決まり、元気な姿を見せられるのもメリットのひとつ。清潔感のあるヘアスタイルで、いつでも明るくいられたら、老人ホーム内で自然に友だちが増え、さらに楽しく過ごせるようになります。

安心してヘアカットできる

外出してヘアサロンで髪を切るのもいいのですが、ヘアサロンの美容師は介護に関する知識がないため、無理な姿勢で施術することがあります。介護のプロのヘルパーに切ってもらうと、今度は衛生管理の面で不安です。

ところが訪問美容師はヘアカットのプロでありながら、ほとんどの人が介護の知識を持っているため、安心してヘアカットしてもらえます。しかも近くにはヘルパーが控えていますので、何かトラブルが発生しても、すぐに対応してもらえます。

老人ホームで訪問美容を利用するデメリット

老人ホームの訪問美容はメリットだけでなく、下記のようなデメリットもあり、利用するときには注意が必要です。

デメリット

  • 思い通りのヘアスタイルに仕上がりにくい
  • 同じ人にヘアカットしてもらえない
  • 金銭的な理由で訪問美容を使えない人に疎まれる

デメリットについても、詳しく見ていきましょう。

思い通りのヘアスタイルに仕上がりにくい

老人ホームが提携している訪問美容を利用すると、ヘアスタイルが思い通りにならないことが多いというデメリットがあります。その理由は2つ。

  • 短時間で何人もヘアカットしなくてはいけない
  • スタイリスト経験のない人がヘアカットすることも多い

老人ホームの訪問美容の場合、ヘアカットしたい人数が多くて、1人あたりのヘアカット時間が限られているので、どうしても仕上がりが雑になりがちです。老人ホームによってはヘアスタイルの注文ができず、みんな同じような短い髪型にされてしまうこともあります。

しかも美容学校を卒業したばかりで、ヘアサロンのスタイリスト経験がないスキルの低い人が担当するようなこともあり、その場合は思い通りの仕上がりになりません。ただし、最近はカットスキルの高い美容師と提携している老人ホームも増えつつあります。

同じ人にヘアカットしてもらえない

老人ホームが個人の訪問美容師と提携しているなら、毎回同じ人が来てくれますが、多くのケースで介護専門の訪問美容事業者と提携しています。そのような事業者は大勢のスタッフを抱えており、必ずしも同じ人が老人ホームに派遣されるとは限りません。

このため、ヘアサロンのようにカット前のカウンセリングを受けたり、髪質の変化に合わせてヘアスタイルを提案してもらったりすることができません。1,000円カットのように毎回違う人が髪を切ることになり、仕上がりが安定しないのも、老人ホームの訪問美容のデメリットです。

金銭的な理由で訪問美容を使えない人に疎まれる

老人ホームの利用者の中には、お金がなくてヘアカットは年1回しかできないという人もいます。毎月のようにヘアカットしていると、そのような人から疎まれることがあります。そうなると周りの目が気になって、自由にヘアカットできなくなりますよね。

すべての老人ホームでそのような問題が起きているわけではありませんが、集団生活をしていれば、そのようなことがきっかけで人間関係が悪化することも考えられます。どうしようもないことですが、そのようなことが起きる可能性もあることを覚えておきましょう。

まとめ

美容師法や理容師法により、ヘアカットは美容師もしくは理容師でないとしてはいけないとされていますが、現実にはヘルパーがヘアカットしている老人ホームもあります。衛生管理の視点から考えるとこれはNG。できるだけ訪問美容を利用できる施設に入居しましょう。

老人ホームでのヘアカットは介護保険対象外で、相場は1,500円~4,000円。老人ホームの提携している訪問美容師が入居者をまとめてヘアカットする場合には2,000円前後、自分で依頼する場合には4,000円程度かかります。

老人ホームの月額費用もかかっているので、できるだけ出費は避けたいかもしれませんが、ヘアカットすることで介護を受けやすくなります。何よりも気分転換になり、気持ちが明るくなるといったメリットもありますので、老人ホームでも定期的にヘアカットするのがおすすめです。